2023/11/03 09:15


新作のハーモニウムという作品について制作に至った私の気持ちをここで伝えさせてください。

小説カート・ヴォネガットJr著書『タイタンの妖女』という小説が私は大好きな作品の一つにあります。
作中に主人公の人物と共に水星に不時着してしまったボアズという男が出会った『ハーモニウム』という生物。
彼らは水星の奥深い所に生息し、「水星の歌」と呼ばれる振動を養分として生息を続けていくことができます。

彼らは微弱ながらテレパシー能力を持っていますが、メッセージは2つしかありません。
「ボクラハココニイル ココニイル ココニイル」Here I'm.
「キミガソコニイテヨカッタ ヨカッタ ヨカッタ」 So glad you're.

ボアズは地球に戻れる事が分かっても水星に残りハーモニウムと生きていく事を決めます。
何故なら地球にいても今まで特に恵まれた事もなく誰かに必要とされた経験もなく、もし地球に戻れたとしてもボアズは火星人として地球人と戦争をしなくてはならないからです。

小説の一幕のお話ですが私はこのボアズとハーモニウムのシーンが悲しくて優しくてとても大好きです。


アバロンシェルに出会った時、ピンとハーモニウムってこんな感じなのかなと私は思いました。
小説の中の彼らなので真実は私が見たアバロンシェルが私の中での真実なのですが、ボアズの感情をもう一度読み直したいと思いまたタイタンの妖女を手にしました。
彼は何て悲しい男なんだろうと思いながら自分もその立場に立つと水星に残りたいと思うのではないかと思ったのです。
ハーモニウムはメッセージを2つだけ伝えてくれます。
そのメッセージ以外には何も反応はありません。
でもそのメッセージだけでハーモニウムが居心地の良い環境を作る事に楽しさや発見を見出し、彼らのために一生懸命にやるべき事を行うボアズはとても幸せなのではないかと思うのです。

私は、ボアズが沢山のハーモニウム達に囲まれて楽しく過ごしている事を想像しながらリングをデザインして制作しました。
水星にいるボアズがこの作品を見て楽しんでくれるように。
又、このハーモニウムのリングを着けて頂けた方をボアズが見つけてくれて心地よい環境を作ってもらえたらな。と思っています。